ギターが弾きたいと思ってインターネットや教則本で情報を得ながら練習を始めたけど、
『思うように弾けない』
『そもそもギターってこんなに弾き辛いの?』
『自分には(手の大きさなど)合わないんじゃないか』
『ある程度弾けるようになってきたけど、ちゃんと弾けない』
と悩み戸惑う方は多いのではないかと思います。
今までたくさんの生徒さんを見てきて、初心者の方全員に共通して当てはまる、
『ギターが弾けない最大の理由』が明確になってきました。
ここに気付いた時、ギターって最初ほど大変な楽器だなあと改めて感じました。
過去にギターにチャレンジしたけど自分には合わないのかな、と感じている方にぜひ知ってほしい話です。
1.初心者がギターが弾けない最大の理由とはなにか?
弾けない最大の理由、それは身体とギターの位置関係(フォーム)にあります。
弾けないフォームで弾こうとしているからです。
1-1.弾けるフォーム、弾けないフォーム
下の写真は、ギターを持った時の自分の身体とギターの位置関係を天井から見た図です。
多くの方が上の写真のように、身体の真正面にギターを持ってきてしまいがちですが、
実はこれは間違ったフォームです。
実際は下写真のように、
身体とギターの角度は45度~50度くらい開くのが正解です。
1-2.なんで45度~50度開くの?
その理由は二点あります。
1-2-a. 理由その一
それは指と指の開き具合に大きく関係するからですが、
その前に身体の構造について説明させてください。
①下の写真は指を伸ばした時と曲げた時の、開き具合を比較したものです。
私の手で、人差し指先から小指先までの直線距離は、
関節を伸ばした時は約15センチメートル、関節を曲げた時は約7センチメートルです。
つまり指の関節を曲げると、指の開き具合は伸ばした時と比べ半分以下になってしまうことがわかります。
②次に、ギターの1フレットから4フレットまでの距離を測ってみます。約9.5センチメートルです。
③1フレットから順番に人差し指、中指、薬指、小指と置いてみます。
関節を曲げると人差し指から小指まで7センチしか開かないはずなのに、どうして9.5センチの幅を押さえられるのでしょうか?
④ ③の答え、それは関節を完全に曲げていないからです。
指の第一、第二関節をゆるやかに曲げれば、9.5センチの幅を作ることは簡単です。
⑤つまり、
・指の第一、第二関節を伸ばせば伸ばすほど指は開きます。
・指の第一、第二関節を曲げれば曲げるほど指は中央に集まってくるため開きません。
以上から、
指はゆるやかに曲げた方が、楽に指を開いて押さえられることがわかります。
⑥ ⑤の結論がギターのフォームにどのような関係があるのでしょうか?
身体とギターの角度が狭くなると、
無意識のうちに指の第一、第二関節を出来るかぎり曲げて指板を押さえようとします。
左の写真が、身体とギターとの角度が狭い時の指の曲がり具合、
右の写真が、身体とギターとの角度が45度以上の時の指の曲がり具合を比較したものです。
右の写真の方が関節が緩やかにカーブしており、左の方がカーブがきつくなっていることが分かります。
身体とギターの角度が狭い
↓
指の関節を必要以上に曲げて弦を押さえてしまう
↓
指がうまく開かず、押さえたい場所に指が届かない
反対に、
身体とギターの角度を45度以上に広くとる
↓
指の関節をゆるやかに曲げて弦を押さえられる
↓
指を大きく開いて押さえることが出来る
これが、身体とギターの角度を45度以上にする理由のひとつ目です。
1-2-b. 理由その二
ふたつ目の理由は、ギターとの角度を開いた方が身体にとって無理のない、自然な姿勢になるからです。
左腕を軽く目の前に出し、無理のない範囲内で動かしてみます。
自分の右側には自由に動かせますが、、、、
自分の左側にはほとんど動きません。
つまり左手の最も楽で自然な可動域というのは、下記赤色の部分のみということになります。
すなわち上の写真のように、
この可動域(赤色範囲内)にネックを配置させれば無理のない、自然な姿勢で弦を押さえられる
ということになります。
逆にいうと、この赤色部分以外の範囲にネックをもってきてしまうのは、
身体にとって不自然な姿勢である
と言えます。
これが、身体とギターの角度を45度以上にする理由のふたつ目です。
2.正しいフォームについては分かった、でも、、、
ここまでの説明で、ギターと身体の角度を45度以上開いた方がはるかに演奏がしやすく、効率よく上達することがおわかりいただけたかと思います。
しかし初心者の方で実際にこの正しいフォームを維持できる人は、
ほとんどいません
なぜでしょうか?
2-1.正しいフォームを維持できない理由
下の写真を見てください。正しいフォームでの私の視点から見た、ネックの様子です。
このように、自分から見えているのは、
ネック上部のポジションマーク、フレット、6弦、だけです。
他の5弦~1弦の位置や、指板の様子は全く見えません。
このフォームで初心者の方が弦を押さえようとした時、なにが起こるかというと、、
ネックを自分の身体の方向へ引き寄せ、のぞき込んで指板を確認しようとします。
このような行為の結果、ネックと身体のあいだの角度は狭まり、間違ったフォームへと変化していきます。
1.指板が見えないのでネックを引き寄せ、のぞき込む
↓
2.身体とギターの角度が狭く(間違ったフォームに)なる
↓
3.指が開かず、うまく弾けない
↓
4.指板を確認しようとネックを引き寄せ、のぞき込む
↓
2~4を繰り返す、、、
と、このような悪循環にはまってしまうのです。
2-2.もうひとつの悪循環
指板が見えないからといって、ネックの6弦側を自分の方に傾けて指板を見ようとする行為も、
悪循環にはまってしまいがちです。
指板に対して垂直ではなく、斜めに弦を押さえることになるので、不要な方向に力を入れてしまうことになります。
その結果、しっかり力を入れているのに弦がきちんと押さえられていなかったり、余分な力が入りすぎたりしてしまいます。
2-3.じゃあどうすれば良いの?
唯一の改善方法は、
指板をのぞき込むことなく、狙った弦やフレットを押さえられるようになること
です。
指板を見ようとすることで悪循環にはまってしまうのなら、
指板を見ずに、ネック上部のポジションマークだけを頼りに、押さえたい弦を押さえられるようにする以外に道はありません。
またこの技術を、『ある程度弾けるようになってから、、』とかではなく、
ギター初心者段階から、身に付けていく必要があります。
× 『ギターが上手くなった』結果、『指板を見ずに弾けるようになる』
のではなく、
〇 『指板を見ずに弾けるようになる』から、『ギターが上手くなる』
のです。
それでは、『指板を見ずに弾けるようになる』ためにどのようなトレーニングが必要なのでしょうか?
3.『弾けるフォーム』の作り方とフォームを身に付ける為のトレーニング方法
3-1.『弾けるフォーム』の作り方
1.いすの方向と同じ方向に座り、右足太ももの付け根にギターを置きます。両足は内股にならないように、わずかに開きます。
2.左腕をネックの下にくぐらせ、軽く前に出します。ひじの位置はおへその位置まで前に出します。
3.左手指はちからを入れません。右手でネックの付け根を上からつかみます。
4.ネックが左手の指先に触れるまで、右手でギターの角度を開いていきます。
3-2.フォームを身に付ける為のトレーニング
正しいフォームを作ったら、左手の親指の指先がネックの真ん中にくるように置きます。
準備が出来たら、指板をのぞき込むことなく下記のように弾いていきます。
押さえた指を離して次の指を押さえていくのではなく、
押さえた指を押さえたまま、次の指を押さえていきます。
このように音をつなげて弾きます。
これが出来たら、次に5弦と4弦の組み合わせで行っていきます。
こうして6弦から1弦まで、指板を見ずに全ての音をつなげて弾けるよう、日々トレーニングしましょう。
3-3.もうひとつのトレーニング
自分が現時点で簡単に押さえられるコード2つを、指板を見ずに左手の感覚だけでコードチェンジ、ストロークしてみましょう。
『Em→Am』『C→Am』『G→D』『G→Am』など、
なんでも良いです。
これだけでも、指板を見ずに弦を押さえる技術がかなり身につきます。(ただし日々行いましょう)
4.まとめ
『ギター初心者にとって何故ギターは弾き辛く、難しいのか?』
それは『ギターが弾ける正しいフォーム』とは、
『指板が見えないのでそもそも正しいフォームを維持すること自体が困難』
だからです。
しかし逆に言うと、
『指板を見ることなく押さえられるようになれば、ギターは格段に弾きやすくなり、上達します。』
ぜひ正しいフォームと、上記トレーニングを日々の練習に取り入れてみてください!